大阪地方裁判所 昭和51年(ワ)56号 判決 1978年5月30日
原告(反訴・併号被告)
中山豊治郎
ほか三名
被告(反訴原告)
中原一馬
併号原告
崎山こと中原三千代
主文
一 本訴原告らの請求をいずれも棄却する。
二 反訴原告に対し、反訴被告中山豊治郎は九万四二二八円の、同中山美津子、同中山仁美、同中山晴美は、各自、一七万一四〇九円とその内金一五万四七四二円に対する昭和五〇年五月一四日から、同一万六六六七円に対する同五三年五月三一日から、いずれも右支払済まで年五分の割合による金員の、各支払をせよ。
三 併合事件原告に対し、併合事件被告中山豊治郎は、二六万円とその内金二三万円に対する昭和五〇年五月一四日から、同三万円に対する同五三年五月三一日からいずれも右支払済まで年五分の割合による金員の、同中山美津子、同中山仁美、同中山晴美は、各自、八万六六六六円とその内金七万六六六六円に対する昭和五〇年五月一四日から、同一万円に対する同五三年五月三一日からいずれも右支払済まで年五分の割合による金員の、各支払をせよ。
四 反訴原告および併合事件原告のその余の請求を棄却する。
五 訴訟費用は、本訴原告ら(反訴被告ら)と本訴被告(反訴原告)との間では、本訴と反訴を通じ、本訴被告(反訴原告)に生じた費用の一〇分の九を本訴原告ら(反訴被告ら)の負担、その余を各自の負担とし、併合事件原告と併合事件被告らとの間では、併合事件原告に生じた費用の三分の一を併合事件被告らの負担、その余を各自の負担とする。
六 この判決は、二項および三項につき、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 本訴事件
1 原告中山豊治郎
被告は、同原告に対し三〇二万七〇五二円と内金二七二万七〇五二円に対する昭和五〇年五月一四日から、同三〇万円に対する判決言渡日の翌日から各支払済まで年五分の割合による金員の支払をせよとの判決。
2 原告中山美津子、同中山仁美、同中山晴美
被告は、右原告三名に対し、各六二九万九八〇六円と内金五七二万九八〇六円に対する昭和五〇年五月一四日から、同五七万円に対する判決言渡日の翌日から各支払済まで年五分の割合による金員の支払をせよとの判決。
3 被告中原一馬
(一) 原告らの請求を棄却する。
(二) 訴訟費用は、原告らの負担とする。
以上の判決。
二 反訴事件
1 反訴原告中原一馬
(一) 反訴被告中山豊治郎は、反訴原告に対し、五一万四二二八円の支払をせよ。
(二) 反訴被告中山美津子、同中山仁美、同中山晴美は、各自、反訴原告に対し三一万一四〇九円とその内金一六万一四〇九円に対する昭和五〇年五月一四日から、同一五万円に対する判決言渡日の翌日から各支払済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。
(三) 訴訟費用は、反訴被告らの負担とする。
以上の判決。
2 反訴被告四名
(一) 反訴原告の請求を棄却する。
(二) 反訴費用は、反訴原告の負担とする。
以上の判決。
三 昭和五二年(ワ)第八九号併合事件
1 原告
(一) 被告中山豊治郎は、原告に対し一三五万円とその内金一一五万円に対する昭和五〇年五月一四日から、同二〇万円に対する判決言渡日の翌日から各支払済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。
(二) 被告中山美津子、同中山仁美、同中山晴美は、各自、原告に対し、四五万円とその内金三八万三三三三円に対する昭和五〇年五月一四日から、同六万六六六七円に対する判決言渡日の翌日から各支払済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。
(三) 訴訟費用は、被告らの負担とする。
以上の判決と仮執行の宣言。
2 被告四名
(一) 原告の請求を棄却する。
(二) 訴訟費用は、原告の負担とする。
以上の判決。
第二当事者の主張
甲本訴
一 請求原因
1 事故の発生
(一) 発生時 昭和五〇年五月一三日午前三時四〇分頃
(二) 発生地 滋賀県守山市洲本町一二五七番地先十字路上
(三) 原告車 普通乗用自動車(滋五五み一〇六六号)を訴外亡田中準が運転、これに原告中山豊治郎が同乗
(四) 被告車 普通乗用自動車(滋五五は三九四号)を被告中原一馬が運転
(五) 態様 原告車が前記十字路を東進して通り過ぎる際、琵琶湖大橋方面より猛スピードで南進中の被告車に左側面部に衝突された。
(六) 右事故による原告中山豊治郎の傷害部位、程度
(1) 傷病名 頭部外傷、顔面挫傷、左肋骨々折、右膝挫傷
(2) 治療経過 (イ) 済生会滋賀県病院に昭和五〇年五月一三日から同年六月一三日までの三二日間入院
(ロ) 中山病院に同年六月一三日から同年九月一三日までの九三日間入院
(3) 後遺症 外傷性頸部症候群、肋骨々折後遺症
(七) 右事改による訴外田中準の被害程度
昭和五〇年五月一三日午前七時三〇分済生会滋賀県病院で死亡
2 責任原因
被告は、前記被告車を所有し、これを自己のために運行の用に供していたものであるから、その運行より発生した右事故による原告らの後記損害を自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条により、賠償すべき責任がある。
3 損害
(一) 原告中山豊治郎関係
(1) 治療費関係 六五万七〇五二円
(内訳) (イ) 治療費 四七万二四五二円
(ロ) 入院雑費 六万二五〇〇円(入院期間一二五日につき一日当り五〇〇円の割合)
(ハ) 付添費 一二万二一〇〇円(付添所要期間三三日につき一日当り三七〇〇円の割合)
(2) 休業による逸失利益 一五〇万円
同原告は、肩書住所地で運送業を経営し、月額三〇万円を下らない収益を挙げていたところ、右事故のため昭和五〇年九月一三日までの四か月間入院治療を受け、その間店をまかせる者もなく、全く仕事ができなかつたことによるもの。
(3) 後遺症による逸失利益 五四万円
同原告は、昭和五〇年九月一三日に前記一の1の(六)の(3)の後遺症を残して症状が固定し、同年一二月一日後遺障害等級表一四級の認定を受けた。したがつて、同原告は、右症状固定の日から三年間五パーセントの労働能力を喪失したものであり、この間の同原告の本来の月収は三〇万円を下らないものであつたことによるもの。
(4) 慰藉料 一五〇万円
(5) 弁護士費用 三〇万円
同原告は、本件訴訟の追行を弁護士に委任し、報酬として、請求金額の一割に相当する額の金員を支払うことを約した。
(二) 原告中山美津子、同中山仁美、同中山晴美関係
(1) 訴外田中準の逸失利益 一八七八万九四二〇円
同訴外人の死亡時の年齢三六歳、就労可能年数三一年、月収一七万円、生活費月収の二分の一、ホフマン式計算で中間利息控除することによるもの。
(2) 同訴外人の慰藉料 八〇〇万円
(3) 原告中山美津子は妻として、その余の原告らはいずれも直系卑属として、法定相続分に応じて、同訴外人の権利を相続で承継した。
(4) 同訴外人の葬儀費 四〇万円
右原告ら三名が均等額で負担した。
(5) 弁護士費用 右原告ら三名につき各五七万円
右原告ら三名は、本件訴訟の追行を弁護士に委任し、報酬として請求金額の一割に相当する額の金員を支払うことを約した。
4 損益相殺
原告中山豊治郎は、一一七万円を、原告中山美津子、同中山仁美、同中山晴美は、一〇〇〇万円をいずれも自動車損害賠償保障法により、右事故の損害賠償額の支払として受領した。
5 結論
よつて、原告中山豊治郎は、被告に対し、右損害合計額から損益相殺をした残額の三〇二万七〇五二円とその内金二七二万七〇五二円(後記弁護士費用にかかる損害以外の損害額)に対しては本件事故発生後の昭和五〇年五月一四日から、同三〇万円(弁護士費用にかかる損害額)に対しては判決言渡日の翌日からいずれもその支払済まで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、原告中山美津子、同中山仁美、同中山晴美は、被告に対し、それぞれ、右損害合計額から損益相殺をした残額の六二九万九八〇六円とその内金五七二万九八〇六円(後記弁護士費用にかかる損害以外の損害額)に対しては本件事故発生後の昭和五〇年五月一四日から、同五七万円(弁護士費用にかかる損害額)に対しては判決言渡日の翌日から、いずれもその支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する被告の認否と被告の主張
1(一) 請求原因1の(一)ないし(四)の各事実は認める。
(二) 同1の(五)の事実のうち被告が猛スピードであつたとの点は否認する。
(三) 同1の(六)の事実は不知。
(四) 同1の(七)の事実は認める。
(五) 同2の事実は認めるが、被告に損害賠償の責任があるとの主張は争う。
(六) 同3の事実はすべて不知。
(七) 同4の事実は認める。
(八) 同5の主張は争う。
2 本件事故は、訴外田中準が対面の信号機が赤を表示しているのに交差点に進入したため、折から対面青の信号に従つて右交差点に進入しつつあつた被告車と衝突して生じたものであり、被告中原一馬には本件事故につき過失その他自賠法三条による保有者の責任を負うべき事由はない。
三 被告の右主張に対する原告らの認否
右被告の主張事実は、否認する。
乙反訴
一 請求原因
1 自動車事故関係
(一) 事故の発生
(1) 昭和五〇年五月一三日午前三時四〇分頃守山市洲本町内で反訴原告所有車と訴外亡田中準が運転する反訴被告中山豊治郎の所有車とが衝突した。
(2) 右事故により反訴原告の所有車は、大破して使用不能となり、反訴原告は、受傷し、八日間休業して通院治療を受けた。
(二) 責任原因
(1) 反訴被告中山豊治郎は、訴外亡田中準運転の自動車の保有者として、右事故による反訴原告の身体傷害から生じた反訴原告の損害を賠償すべき責任がある。また、右事故は、訴外亡田中準が赤信号にもかかわらず交差点に突入したため生じたものとして同訴外人の故意又は過失によるものであるから、同訴外人は、不法行為者として、右事故で反訴原告が受けた一切の損害を賠償する責任がある。
(2) 同訴外人が死亡し、反訴被告中山美津子、同中山仁美、同中山晴美の三名は、相続により、均等の相続分で同訴外人の地位を承継した。
(三) 損害
(1) 前記反訴原告所有車の大破による車両損害三六万円および事故車運搬料六万円
(2) 前記反訴原告の受傷による治療費一万四二二八円、慰藉料五万円
(3) 弁護士費用 五万円
2 不当訴訟関係
本件事故は、前記のとおり訴外亡田中準の故意又は過失により生じたもので、反訴原告に過失その他の帰責事由がなく、したがつて本件事故につき反訴原告に責任のないことが明確であるにもかかわらず、反訴被告ら四名は、反訴原告を被告とする本訴を提起し、反訴被告をして弁護士に委任して応訴を余儀なくさせたものであるから、右反訴被告らの所為は、反訴原告に対する共同不法行為となり、したがつて反訴被告らは、これにより反訴原告が蒙つた損害を賠償すべく、右損害としては、右事件につき委任した弁護士への報酬として取決めた四〇万円がそれに当るものである。
3 結論
よつて、反訴原告は、反訴被告中山豊治郎に対し、右損害金のうち、1の(三)の(2)、(3)および2の合計五一万四二二八円の支払を求め、反訴被告中山美津子、同中山仁美、同中山晴美に対し、各自右損害金(1の(三)の(1)ないし(3)および2の合計九三万四二二八円)の三分の一にあたる三一万一四〇九円とその内金一六万一四〇九円(1の(三)の(1)および(2)の分)に対しては本件事故発生後の昭和五〇年五月一四日から、同一五万円(1の(三)の(3)および2の分)に対しては判決言渡日の翌日から、いずれもその支払済まで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 反訴請求原因に対する反訴被告らの認否および主張
1(一) 反訴請求原因1の(一)の(1)の事実は認める。同(2)の事実は不知。
(二) 同1の(二)の(1)の事実は否認する。同(2)の事実は認める。
(三) 同1の(三)の事実は不知。
(四) 同2の事実のうち、反訴被告らが本訴を提起したことは認めるが、右訴訟が不当訴訟であることは否認し、その余の点は不知。
(五) 同3の主張は争う。
2 本件事故は、反訴原告が赤信号を無視し、時速一〇〇キロメートル以上の高速度で事故現場の交差点に突入したことのみに起因するものであり、訴外田中準に過失や反訴被告中山豊治郎に自賠法三条による保有者の責任を負うべき事由はない。
三 反訴被告らの右主張に対する反訴原告の認否
右反訴被告らの主張事実は、否認する。
丙 昭和五二年(ワ)第八九号事件
一 請求原因
1 事故の発生
(一) 昭和五〇年五月一三日守山市洲本町内において訴外亡田中準が運転する被告中山豊治郎の所有車と訴外中原一馬の運転する同訴外人の所有車が衝突し、原告は、右中原の車両の助手席に同乗していた。
(二) 原告は、右事故により顔面に一六日間の通院治療を要する負傷をした。
2 責任原因
(一) 被告中山豊治郎は、訴外亡田中準運転の自動車の保有車として、右事故による原告の右身体傷害から生じた原告の損害を賠償すべき責任がある。また、事故は、訴外田中準が前方の信号不注視、不確認により生じたものであるから、同訴外人は、不法行為者として、右事故で原告が受けた損害を賠償する責任がある。
(二) 同訴外人が死亡したため、被告中山美津子、同中山仁美、同中山晴美の三名は、相続により、均等の相続分で同訴外人の地位を承継した。
3 損害
(一) 通院、休業による慰藉料 五万円
原告が、右負傷のため一六日間通院し、その間休業せざるをえなかつたことによるもの。
(二) 傷跡後遺症による慰藉料 一一〇万円
右負傷が原告の顔面にあるため、原告が傷跡後遺症に悩み現在に至つていることによるもの。
(三) 弁護士費用 二〇万円
原告は、本件訴訟の追行を弁護士に委任し、着手金一〇万円と報酬一〇万円の出捐があることによるもの。
4 結論
よつて、原告は、被告中山豊治郎に対し、右損害金合計一三五万円とその内金一一五万円(3の(一)および(二)の分)に対する本件事故後の昭和五〇年五月一四日から、同二〇万円(3の(三)の分)に対する本判決言渡日の翌日から、いずれもその支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、被告中山美津子、同中山晴美、同中山仁美に対し、各自、右損害金の三分の一にあたる四五万円とその内金三八万三三三三円(3の(一)および(二)の分)に対する本件事故後の昭和五〇年五月一四日から、同六万六六六七円(3の(三)の分)に対する判決言渡日の翌日から、いずれもその支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する被告らの認否と被告らの主張
1(一) 請求原因1の(一)の事実は認める。同(二)の事実は不知。
(二) 同2の(一)の事実は否認する。同(二)の事実は認める。
(三) 同3の事実は不知。
(四) 同4の主張は争う。
2 本件事故は、本訴被告が赤信号を無視し、時速一〇〇キロメートル以上の高速度で事故現場の交差点に突入したことのみに起因するものであり、訴外田中準に過失や被告中山豊治郎に自賠法三条による保有者の責任を負うべき事由はない。
三 被告らの右主張に対する原告の認否
右被告らの主張事実は、否認する。
第三証拠 〔略〕
理由
一 まず、本訴、反訴および併合事件につき、事故の発生、その原因および各当事者の過失についての前提事実関係について判断する。
1 昭和五〇年五月一三日午前三時四〇分ころ、滋賀県守山市洲本町一二五七番地先の通称開発交差点(以下「本件交差点」という。)において、本訴原告(反訴および併合事件の各被告)中山豊治郎(以下「原告豊治郎」という。)所有の原告車を訴外田中準が運転し、これに原告豊治郎が同乗し、草津市方向から野洲郡中主町方向に進行中、本訴被告(反訴原告)中原一馬(以下「被告」という。)所有の被告車を被告が運転し、これに併合事件原告が同乗し、大津市堅田町方向から栗太郡栗東町方向に進行中、右両車が衝突する本件事故が発生したことについては、当事者間に争いがない。
2 いずれも成立に争いのない乙第一号証、同第一号証の一、同第二号証、同第二号証の一ないし五、同号証の七、同第三号証の一、被告主張の写真であることに争いのない同第二号証の一一(写真一一葉)によると、
(一) 本件交差点は、車道幅員約六・二メートルの県道栗東大津線と同約七・三メートルの県道彦根近江八幡大津線が十字型に交差する地点(原告車は後者の県道を北東方向に、被告車は前者の県道を南東方向に各進行)で、滋賀県公安委員会の設置した信号機により交通規制が行なわれている場所であり、右の各県道とも最高速度五〇キロメートル毎時と定められていること、
(二) 右信号機は、本件事故当時、県道栗東大津線から対面するものでは、赤色の燈火が四九秒間、青色のそれが六一秒間、黄色のそれが四秒間の順と時間とし、同彦根近江八幡大津線から対面するものでは、赤色のそれが六九秒間、青色のそれが四一秒間、黄色のそれが四秒間の順と時間とするとともに、双方の赤色の燈火が二秒間重なる(全赤時間が二秒間となる)ようにして表示されていたこと、
(三) 右両県道とも、原、被告両車の進行経路から本件交差点に至るとき、その前方に対する見透しは、極めて良好で、県道栗東大津線では、本件事故現場の約九〇〇メートル手前から、同彦根近江八幡大津線では、同約四五〇メートルの手前から、いずれも対面する本件交差点の前記信号機の燈火を視認することができるけれども、一方の県道から他方の県道に対する見透しは、県道彦根近江八幡大津線の本件事故現場に至る八、九〇メートル手前の地点から約六三メートルの間の道路左脇に二棟の建物が存在するため、同県道からは右約六三メートルの間左方の県道栗東大津線に対する見透しが完全に効かなくなり、他方、右県道栗東大津線からは本件事故現場の手前五八メートルの地点から同約一〇メートルの地点までの約四八メートルの間右方の県道彦根近江八幡大津線に対する見透しが完全に効かなくなること、
(四) 原、被告両車は、いずれも乗車定員五人の同一会社製造にかかる小型乗用自動車で、ただ車両総重量が原告車では一二四五キログラム、被告車では一五三五キログラムであるところ、本件事故における両車の衝突は、原告車の左側中央部に被告車の前部が突込んだ形となり、原告車は、右衝突地点から右斜前方約二二・四〇メートルの地点で車首を北西方向に向けて停止し、被告車は、右衝突地点からほぼ進行方向約一六・四〇メートルの地点で車首を反対方向に向けて停止し、両車の前記衝突部位の車体に顕著な凹損が見られるほか両車の各四個の車輪について、被告車の右側前車輪が車体の右(外)側に大きく逸脱した状況となつているのに対し、他の車輪が外見上極立つた変化を示していないこと、
(五) 本件事故現場には、衝突地点に至るまでの間に原、被告両車のスリツプ痕はなく、衝突地点から始まる七本のスリツプ痕があり、うち二本は、前記停止地点の被告車の両後車輪の位置に連らなる長さ約一九・九五メートル、同一七・六〇メートルのものであり、その余の五本のうちの一本が長さ約一三・四〇メートルであるほかはいずれも四メートル未満のもので、いずれも東南東方向に印象されていること、
以上の各事実が認められ、他に右認定に反する証拠はない。
3(一) 右認定事実のうち(四)および(五)の点を総合して考えると、原、被告両車の各運転者が、いずれも本件現場で衝突する直前まで互に相手車を現認していなかつたものと推認される(この点は、原告豊治郎、被告各本人尋問(第一回)の結果によつても裏付けられる。)とともに、右衝突の直前、原、被告両車がともにかなりの高速度で走行していたものと推認される。この点につき被告は、当時被告車が毎時約六〇キロメートルの速度であつた旨供述(第一回本人尋問)しているが、右速度を超えていなかつたことを示す証拠はなく、他方原告車の当時の速度も前判示の両車の車体、車輪の破損状況、スリツプ痕、停車位置等を勘案すると被告車のそれを下廻るものであつたことは認めがたいところである。
(二) 原告豊治郎は、右衝突直前の事情として、「原告車は、本件交差点の手前約一〇〇メートルの地点でそれまでの毎時五〇キロメートルの速度を同約二〇キロメートルに減速した。その際、対面の信号機は赤色の燈火であり、反対側のそれは黄色であつた。札幌ラーメン店前付近で対面の信号が青色に、反対側のそれが赤色に同時に変つたので、法竜川付近で加速して本件交差点に入つた。」旨供述(本人尋問)するのであるが、成立に争いのない乙第二号証によると、右原告のいう札幌ラーメン店は、本件事故現場から約三〇メートルの、法竜川は、同約二〇メートルの各地点にあることが認められるところ、右原告のいう原告車の本件事故時の速度は、前判示2の(四)および(五)の各事実にそぐわないうえに、右原告のいうところから算定される反対側信号機の黄色の燈火の継続時間(短くとも一〇秒以上となる。)や対面と反対側の各信号機の燈火の変化の仕方は、いずれも前判示2の(二)の事実と明白に矛盾するから、右原告の供述は、到底信用することができない。
(三) 他方、証人迎定夫は、「本件事故当夜県道彦根近江八幡大津線を草津市方向から本件交差点に向け、自動車を運転して毎時五〇ないし六〇キロメートルの速度で走行中、本件事故現場手前約三〇〇メートルの地点で前方に異常な発光現象を認め、同地点から約一四二メートル進行した地点で対面の信号機が青色の燈火を示しているのを見、速度をやや落して本件交差点に入り、そこで本件事故の第一発見者となつた。」旨を証言するところ、右証言中の異常な発光現象が本件事故の発生時に伴うものと解するならば、同証人は、本件事故が発生して約二〇秒後に本件交差点に入つたことおよびその際同証人の対面する信号機は、少くともその約一〇秒前の段階から青色の燈火を示していたことを意味するものとなり、そうすると右信号機の信号の順と時間が前記2の(二)に判示のとおりである以上、原告車が本件交差点に入つた際、右信号機が青色の燈火を表示していた可能性、したがつて被告車が本件交差点に入つた際その対面する信号機が赤色の燈火を表示していた可能性が否定しがたいものということになる。しかしながら証人金森千代蔵の証言と成立に争いのない乙第一号証、同第三号証の一によると、本件事故現場付近に居住の訴外金森千代蔵および同武内とし子の両名は、相互に無関係の場で、本件事故の発生を知つて本件交差点付近に出向き、そこで等しく前記訴外迎定夫の運転する自動車が右交差点に入つてくるのを目撃し、これが本件事故発生後六六ないし六七秒の段階であつた事情がかなりの確かさをもつて認められるので、前判示の同訴外人が本件事故発生後約二〇秒の段階で本件交差点に入つた事情は否定されるとともに、前記2の(二)に判示のとおりの本件交差点の信号機の信号の順と時間よりすれば、前判示のように同訴外人が対面する信号機のすでに少くとも約一〇秒間経過している青色の燈火信号に従つて本件交差点に入つている以上、その六六ないし六七秒前の本件事故発生の時点においては、右信号機は、少くとも一〇秒前後以前から赤色の燈火信号を表示していたものであり、他方反対側の信号機は、少くとも右一〇秒前後の時間から二秒間を控除した以前から青色の燈火信号を表示していたものと認めることができる。右認定に副う証人崎山三千代の証言および被告本人尋問(第一回)の結果は、信用できるものであり、これに反する原告中山美津子本人尋問(第一回)の結果は、原告豊治郎の前記供述とともに信用できない。
二 本訴について
1 被告の責任
(一) 被告が被告車を所有し、これを自己のため運行の用に供していたことについては当事者間に争いがない。
(二) 被告は、自賠法三条の但書の免責の事由がある旨主張するところ、前記一に判示の事実関係から、本件事故の直接原因の大部分は、原告車を運転した訴外田中準の信号を無視してなした本件交差点への高速度の進入にあると認められるものの、なお、被告にも制限速度を上廻る高速度で被告車を運転した不注意があり、これが本件事故発生の一因となつていないとまでは断定しがたいものであるから、その余の点について判断するまでもなく、被告の右主張は、採用することができない。
(三) そうすると、被告は、被告車の運行供用者として自賠法三条本文により、原告豊治郎および訴外田中準ないしその相続人であるその余の原告らが蒙つた本件事故による損害を賠償すべき義務がある。
2 原告らの損害と過失相殺および損益相殺
(一) 本件事故により、訴外田中準が死亡したことについては、当事者間に争いがなく、原告豊治郎がその主張するとおりの負傷をしたことは、成立に争いのない甲第二ないし六号証によつてこれを認めることができる。
(二) しかして、前記一の2および3に判示の本件事故の態様と原告豊治郎、同中山美津子各本人尋問(第一回)の結果によつて認められる次の事実、すなわち訴外田中準は、本件事故発生当時、原告豊治郎に雇われていた者で、右事故発生当夜得意先へ集金に行く同原告に同道することとなり、助手席に同乗した同原告の指示により原告車を運転中本件事故を発生させたものであることに徴すると、本件事故の原告車側と被告車側との過失の割合は、被告車側を一とすると原告車側が三を下廻るものでないものと判定されるとともに、右原告車側の過失は、訴外田中準と原告豊治郎の両名につき同程度に斟酌するのが相当と考える。
(三) ところで、原告豊治郎は、右負傷により三八七万七〇五二円の直接の損害と三〇万円の本訴遂行のための弁護士費用負担の損害を蒙り、他方、訴外田中準は、右死亡により二七一八万九四二〇円の損害を蒙り、原告中山美津子は、同訴外人の妻として、同中山仁美、同晴美は、同訴外人の子として、同訴外人の右損害賠償請求権を三分の一ずつ相続するとともに、それぞれ五七万円の本訴遂行のための弁護士費用負担の損害を蒙つた旨主張しているのであるが、本件事故の損害の補填として、自賠責保険より、原告豊治郎が一一七万円の、その余の右原告告三名が一〇〇〇万円の各支払を受けたことについては、当事者間に争いがなく、右原告らの受けた右損害の填補額がいずれも右原告ら主張のそれぞれの損害額の四分の一を超えるものであることは、計数上明らかであるから、前判示の訴外田中準および原告の豊治郎の過失を斟酌すると、右原告ら主張の損害額がそのまま認められることを仮定しても、過失相殺の結果、被告の原告らに対して賠償すべき額が、原告らの受領した前記自賠責保険よりの損害填補額を上廻るものとは認めがたいところである。
3 そうすると、原告ら主張の各損害は、その額について判定するまでもなく、既に填補されたものというべく、結局、原告らの被告に対する請求は、いずれも理由がないものといわなければならない。
三 反訴および併合事件(但し本件事故による損害賠償関係分)について
1 原告豊治郎の責任
(一) 原告豊治郎が原告車を所有し、これを自己のため運行の用に供していたことについては当事者間に争いがない。
(二) 原告豊治郎は、自賠法三条但書の免責の事由がある旨主張するところ、前記一に判示の事実関係から、本件事故の直接原因の大部分は、原告車を運転した訴外田中準の信号を無視してなした本件交差点への高速度の進入にあるとともに、前記二の(二)に判示の事実関係から原告豊治郎が保有者として原告車の運行に関し注意を怠らなかつたものとは到底認められないから、その余の点について判断するまでもなく、原告豊治郎の右主張は、採用することができない。
(三) そうすると、原告豊治郎は、原告車の運行供用者として、自賠法三条本文により、被告および併合事件原告が蒙つた本件事故による物的損害を除く損害を賠償すべき義務がある。
2 原告中山美津子、同中山仁美、同中山晴美の各責任
(一) 前記一に判示の事実関係から、訴外田中準は、本件事故の直接の加害者として、民法七〇九条により、被告および併合事件原告が蒙つた損害を賠償すべき義務を負担したものであるところ、同訴外人が死亡して、原告中山美津子が妻として、その余の右原告らが子として、法定相続分に従い、同訴外人の権利、義務を相続により承継したことについては、当事者間に争いがない。
(二) そうすると、右原告らは、同訴外人の被告および併合事件原告に対する右損害賠償義務の三分の一ずつを負担したことになる。
3 被告の損害
(一) 被告が本件事故により頸椎捻挫の傷害を受け、本件事故当日に頸部運動時頭痛と頸部痛があるが、他覚症状は特にない状態であり、同年五月二〇日までの間通院治療を受け、同日右自覚症状が消えて治癒し、右治療費として一万四二二八円支出したことおよび被告は、当時社団法人日本調教師会関西本部に厩務員として勤務していた者であるが、右の期間休業を余儀なくされ、その間の給与ないし休業補償を受けていないこと、以上の各事実は、成立に争いのない乙第三号証の二、同第四号証、被告本人尋問(第一、二回)の結果およびこれにより真正に成立したものと認められる乙第一三号証によつて認めることができ、他に右認定に反する証拠はない。
(二) 前判示の被告が受けた傷害の程度、休業による経済的損失を回復していないことその他諸般の事情(ことに本件事故には、前判示のように、被告にも過失が認められるところ、ただ、これが原告車側の過失に比してかなり低度のものであるため、過失相殺をすることを見合わせて慰藉料額を判定するうえでの考慮事情とするにとどめること)を斟酌して、被告が本件事故によつて受けた精神的苦痛を慰藉するには、三万円が相当と考えられる。
(三) また、本件事故により、当時三六万円の価格に評価される被告所有の被告車が破損して使用不能となるとともに、これを事故現場から運搬するため、被告は、六万円の運搬料の支出を余儀なくされたことは、前顕乙第二号証の一一(7および8の写真)、被告本人尋問(第一、二回)の結果およびこれにより真正に成立したものと認められる乙第一〇号証、同第一四号証により認めることができ、他に右認定に反する証拠はない。
(四) 被告が本件反訴の訴訟の提起と追行を弁護士である被告代理人に委任したことは、本件記録上明らかであり、その費用として五万円を右代理人に支払つていることは被告本人尋問(第二回)の結果により認められるところ、事件の難易、審理の経過、請求の認容額等の諸事情を考慮して、右五万円をもつて本件事故と相当因果関係の範囲内のものと認める。
(五) 結局、原告豊治郎が被告に賠償すべき損害額は、治療費一万四二二八円、慰藉料三万円、弁護士費用五万円の合計九万四二二八円であり、原告中山美津子、同中山仁美、同中山晴美の三名が賠償すべきそれは、右の損害額のほか車両損三六万円および運搬料六万円を加算した合計五一万四二二八円の三分の一の各一七万一四〇九円(うち弁護士費用分は一万六六六七円)となる。
4 併合事件原告の損害
(一) 成立に争いのない乙第五ないし七号証、証人崎山三千代の証言、併合事件原告本人尋問(第一、二回)と検証の各結果によると、
1 併合事件原告は、本件事故により、顔面、左手、左膝部挫傷の傷害を受け、本件事故当日から症状固定日の同年一〇月一三日までの間の通院期間があり、この間の実治療日数五日間(うち四日間は同年五月一七日までの間)であつたところ、右傷害のうち顔面挫傷以外には自覚および他覚の症状なく治癒したが、顔面挫傷については、瘢痕醜状の後遺障害がみられること
2 この顔面の瘢痕醜状は、前額部二個所(一個所は中央やや、右寄りの生え際、一個所は眉見)、左眉の付け根部一個所、左眼尻部二個所の計五個所の挫傷の瘢痕であるが、右五個の瘢痕のうち眉見のものが最大であり、全長約二〇ミリメートル、最大幅約二ミリメートルで、薄暗紫色を呈し、それが前額部の中央にほぼ縦に付いたものであるため、幾分目立ち、同原告の容貌を損ずるところがあり、そして生え際の瘢痕がこれに次ぐ大きさと容貌への影響度をもつが、その余の瘢痕については、右の両瘢痕ほど目立つものではないこと
3 同原告は、昭和二二年九月生れの女性で、右受傷当時、独身であつたが、昭和五二年六月被告と結婚し、同四二年から現在に至るまで中央競馬会で事務員として勤務していること
以上の各事実が認められ、他に右認定に反する証拠はない。
(二) 前判示の併合事件原告が受けた傷害の程度と後遺障害の実情(その程度と同原告の性別、年齢、職業等の一身的事情)その他諸般の事情(ことに本件事故には、前判示のように、同原告の夫である被告一馬にも過失が認められるところ、ただ、これが原告車側の過失に比してかなり低度のものであるため、過失相殺をすることを見合わせて慰藉料額を判定するうえでの考慮事情とするにとどめること)を斟酌して、同原告が本件事故によつて受けた精神的苦痛を慰藉するには、二三万円が相当と考えられる。
(三) 併合事件原告が本件訴訟の提起と追行を弁護士である同原告代理人に委任したことは、本件記録上明らかであり、その費用として二〇万円の支払約束を右代理人としていることは、同原告本人尋問(第二回)の結果により認められるところ、事件の難易、審理の経過、請求の認容額等の諸事情を考慮して、右のうち三万円をもつて本件事故と相当因果関係の範囲内のものと認める。
(四) 結局、原告豊治郎が併合事件原告に賠償すべき損害額は、慰藉料二三万円、弁護士費用三万円の合計二六万円であり、原告中山美津子、同中山仁美、同中山晴美の三名が賠償すべきそれは、右の損害額の三分の一の各八万六六六六円(うち弁護士費用分は、一万円)となる。
四 反訴(不当訴訟による損害賠償請求分)について
1 原告豊治郎、同中山美津子、同中山仁美、同中山晴美が被告に対し本訴を提起したことは記録上明らかであり、その請求が理由ないと判定されることは前判示のとおりである。
2 しかして、民事訴訟で不当起訴を理由に損害賠償請求ができるのは、右不当起訴がそれ自体違法なものとして不法行為を構成するからであり、請求が理由のないものとして棄却されたからといつて起訴が直ちに違法のものと評価せられるべきものではなく、右起訴につき訴えの提起者が請求の理由のないことを知りまたは容易に知ることができたにもかかわらず、あえてまたは軽率に起訴したため、右起訴に反社会性が認められるような場合でなければならないと考えられるところ、これを本件についてみると、右原告ら四名がいずれも本件事故による本訴を提起するにつき、その理由のないことを知つていたことを認めるに足る証拠のないことはもちろん、これを容易に知ることができる事情にあつたことをも認めるに足る証拠はない(もつとも、右原告らのうち原告豊治郎については、前判示のように、同原告は、本件事故当時原告車の助手席に乗車していた者であるから、同原告が本人尋問で供述するように本件事故発生直前、その進路前方の信号機の表示を注視していたものとすれば、前判示の事実関係から当然にそれが赤色であることを視認していたものといわなければならず、そうすると同原告には被告に対する本訴請求の理由のないことが少くとも容易に知りえたものとみてよいようにおもわれる。しかしながら、これも前判示のように、同原告の右本人尋問の結果は、他の証拠によつて認められる事実関係に即応せず、同原告が本件事故発生直前、その進路前方の信号機を見ていたこと自体極めて疑わしいものといわなければならない。ただ、そうすると同原告は、自己の知見に反した信号機の表示を主張して本訴を維持しようとしたものとして、その訴訟追行態度は、非難されるべきではあるが、この点は、被告に対して被告車の運行供用者としての責任を問う本訴の提起行為の内容となつているものではなく、したがつてまた被告が主張する損害との因果関係もないものであるから、あえて採り上げるべき事情ではない。)。
3 そうすると、右原告らの不当訴訟を理由とする被告の主張は、理由がないものといわなければならない。
五 よつて、原告豊治郎、同中山美津子、同中山仁美、同中山晴美の本訴請求をいずれも棄却することとし、被告の反訴請求のうち原告豊治郎に対し九万四二二八円、同中山美津子、同中山仁美、同中山晴美に対し、それぞれ一七万一四〇九円の各本件事故による損害金と原告中山美津子以下三名の原告らの分の右損害金にかかる遅延損害金として、いずれも右損害金支払債務につき遅滞の効果が生じた日以後で被告の指定したところにより、弁護士費用分については本判決言渡の日の翌日である昭和五三年五月三一日から、その余の分については本件事故発生の日の翌日である同五〇年五月一四日から、いずれもその支払済まで、民法所定の年五分の割合による金員の支払を求める限度で右の請求を認容して、その余の請求を棄却し、併合事件原告の請求のうち、原告豊治郎に対し二六万円、同中山美津子、同中山仁美、同中山晴美に対し、それぞれ八万六六六六円の各本件事故による損害金と右損害金にかかる遅延損害金として、いずれも右損害金支払債務につき遅滞の効果が生じた日以後で併合事件原告の指定したところにより、前記被告におけると同様の区分、期間、割合による支払を求める限度で右の請求を認容して、その余の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法九二条、九三条を仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 井上清)